日本人・永住者・定住者が本国に残した実子(連れ子)の呼び寄せ要件について

ビザ情報

国際的な家族形態が多様化する中、日本に在留する日本人、永住者、または「定住者」の在留資格を持つ方が、本国にご自身の実子(いわゆる「連れ子」)を残しており、そのお子さんを日本へ呼び寄せたいというご相談は増加傾向にあります。この場合、お子さんは原則として「定住者」の在留資格に該当する可能性があり、その許可には複数の厳格な要件を満たす必要があります。

本稿では、日本人、永住者、または「定住者」の方が、ご自身の連れ子を「定住者」として日本へ招聘するために必要な要件と、その申請における主要な留意点について、行政書士の観点から詳細に解説いたします。

「定住者」の在留資格適用範囲

「定住者」の在留資格は、法務大臣が特別な理由に基づき個別に指定する活動を行う者に付与されるものです。これには、以下のいずれかの状況にある親を持つ実子が含まれることがあります。

  • 親が「日本人の配偶者等」の在留資格を保有していること。
  • 親が「永住者の配偶者等」の在留資格を保有していること。
  • 親が「永住者」の在留資格を保有していること。
  • 親が「定住者」の在留資格を保有していること。(この場合、1年以上の在留期間を指定されていることが必要です。親の定住に至った経緯や日本での生活状況も考慮されます)

加えて、呼び寄せられるお子さん自身も以下の条件を満たす必要があります。

  • 対象となるお子さんが、上記の親の実子であること。
  • 原則として、お子さんが未成年(18歳未満)かつ未婚であること。
    • 成人に近い年齢の場合や既に成人している場合は、許可が難しくなることがあります。ただし、お子さんが成人している場合であっても、疾病等の理由により自立が困難であるなど、特別な人道上の配慮が必要とされる事情がある場合には、個別の審査により許可される可能性もあります。この場合、その必要性を客観的に証明する詳細な資料が求められます。
  • 日本に在留する親からの扶養を受けることが前提であること。

 

扶養能力と生計維持能力に関する厳格な審査

お子さんを日本へ呼び寄せる上で、最も重要かつ厳しく審査されるのが、日本で生活する世帯(主に日本に在留する親、および該当する場合はその配偶者)による十分な扶養能力と安定した生計維持能力の証明です。これは、お子さんが日本において経済的な困窮状態に陥ることなく、安定した生活を送ることを保証するために不可欠な要件となります。

具体的に審査の対象となる主な点は以下の通りです。

  • 十分な収入または資産の保有: 日本に在留する親(および該当する場合はその配偶者)が、連れ子を含む家族全員を扶養するために十分な収入または預貯金を有していることを証明する必要があります。具体的な金額基準は公表されていませんが、生活保護基準を大きく上回る水準の収入が目安とされます。世帯全体での経済状況が総合的に判断されます。
  • 継続的かつ安定した生計維持能力: 一時的な高収入ではなく、将来にわたって安定的に収入が得られる状況にあることが求められます。これを証明するために、課税証明書、納税証明書、源泉徴収票など、過去の収入実績を客観的に示す公的書類の提出が必須となります。
  • 適切な居住環境の確保: 呼び寄せるお子さんを含む家族全員が、居住に十分な広さと設備を有する住居を確保していることが確認されます。不動産の賃貸借契約書の写しや、住居内部および外部の写真等の提出が必要となる場合があります。

 

その他の主要な要件と留意点

扶養能力以外にも、以下に示す諸点が入念に審査されます。

  • 親子関係の明確な証明: お子さんと親との間に実の親子関係が存在することを、出生証明書等の公的書類により明確に証明する必要があります。これらの書類には日本語訳文の添付が求められます。
  • 親権の有無(該当する場合): お子さんの親権に関して、もう一方の親との関係で取り決めがある場合(例:離婚している場合)、日本に呼び寄せる親がお子さんの親権を有していること、または監護権を有し、日本へ呼び寄せることについてもう一方の親の同意があることなどを証明する公的書類(離婚調停調書、離婚協議書、裁判所の決定書など)が必要となります。親権や監護権の状況が不明確な場合、許可は非常に困難となります。
  • 同居の意思と環境: 呼び寄せるお子さんと、日本に在留する親(およびその家族)が同居することが原則的な前提となります。
  • 合理的な呼び寄せ理由: 親が日本に在留を開始してから、お子さんを呼び寄せるまでに一定期間が経過している場合、「なぜ現時点での呼び寄せが必要なのか」という合理的な理由の説明を求められることがあります。
  • 本国における扶養実績: 日本へ呼び寄せる以前から、親が本国においてお子さんを継続的に経済的に扶養していた実績(例:海外送金記録)がある場合、審査において有利に評価される傾向にあります。

 

申請に際して一般的に必要となる書類(一例)

以下の書類は一般的な例であり、申請人の状況や審査官の判断により追加書類の提出が求められることがあります。

【お子さん(申請人)に関する書類】

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 顔写真(縦4cm×横3cm)、パスポートの写し
  • 出生証明書(および日本語訳文)
  • 未婚証明書(未婚であることを証明できる場合)
  • 学校の在学証明書、卒業証明書など(年齢に応じ)

【日本に在留する親、およびその配偶者(身元保証人等)に関する書類】 (親が日本人、永住者、定住者のいずれかにより、一部異なります)

  • 身元保証書(通常、日本に居住する十分な資力のある方がなります。親自身がなる場合も、その配偶者(日本人や永住者など)がなる場合もあります)
  • 親が日本人の場合: 戸籍謄本、住民票(世帯全員記載)、課税・納税証明書、在職証明書、収入証明書類、預金残高証明書、住居に関する書類(賃貸借契約書写し等)など
  • 親が永住者の場合: 在留カードの写し、住民票(世帯全員記載)、課税・納税証明書、在職証明書、収入証明書類、預金残高証明書、住居に関する書類など
  • 親が定住者の場合: 在留カードの写し、住民票(世帯全員記載)、課税・納税証明書、在職証明書、収入証明書類、預金残高証明書、住居に関する書類など。親が定住者である場合は、その親が日本で安定した生活を営んでいることの証明がより重要になります。
  • 親に配偶者がいる場合(その配偶者が身元保証人となる場合など): 上記に準じた書類
  • 親権や監護権を証明する書類(離婚調停調書、離婚協議書、裁判所の決定書など、日本語訳文付き)
  • お子さんへの送金記録など、継続的な扶養実績を示す資料(該当する場合)
  • 本国における結婚証明書(親の婚姻状況を示すため)

 

専門家である行政書士へのご相談

「定住者」の在留資格申請は、個々の家庭状況や背景によって、必要となる書類や立証のポイントが多岐にわたります。特に、親御さんが「定住者」である場合や、親権関係が複雑な場合など、専門的な判断を要するケースも少なくありません。不備なく、かつ的確に申請を行うためには、専門的な知識と経験が不可欠です。

当事務所では、お客様一人ひとりの状況を詳細に伺い、最適な申請戦略の立案から、必要書類の収集、理由書の作成、入国管理局への申請手続きまで、総合的なサポートを提供しております。複雑なケースや過去に不許可となった経緯がある場合でも、諦めることなく、まずはお気軽にご相談ください。

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